Diary of a Perpetual Student

Perpetual Student: A person who remains at university far beyond the normal period

仮説検証サイクルでユーザーの声を高速に叶える「キカク組」の取り組み

arthur-1 Mackerel Advent Calendar 2023ラソン23日目の記事です。

「キカク組」の取り組みをMackerel Drink Upでお話ししました

2023年9月26日に行われたMackerel Drink Up #11で、私 id:arthur-1 が本エントリタイトルと同じ「仮説検証サイクルでユーザーの声を高速に叶える『キカク組』の取り組み」という題で発表させていただきました。

speakerdeck.com

本エントリはこの発表を少しアップデートした上でブログにまとめたものになります。

Mackerel開発の課題

現在、MackerelチームではOpenTelemetry対応とSAML対応という2本の大きな開発を進めています。チーム内の多くのエンジニアがこちらの大型開発に携わっています。そのため、ユーザーの要望やdogfoodingから生まれた既存の他の課題を解決するためのリソースが限られてしまっている状況です。

エンジニアリソースが限られているからといって、Mackerelの小さな進化を停滞させることはできません。この状況では、様々な課題に対してどの優先順位で取り組み何を作るのかという判断がよりシビアになってきます。やれることが限られているからこそ、何をするかが大事になってくるということです。

これまでMackerelチームにはどんな施策を優先すべきかという数値指標がなく、プロダクトオーナーの判断やそれをサポートするメンバーの助言によって優先順位が決められていました。プロダクトオーナーが単一障害点になる(視座が固定され得る)ことが、何をするかという選択がより重要となる状況において問題になりました。

また、課題を解決するためにとても大きなものを作ろうとするとリリースが停滞してしまいます。開発サイクルでエンジニアが自信を持ってモノづくりに集中できるよう、ディスカバリーの時点で小さく作れる確度の高いネタになっていて欲しいです。

キカク組の始動

ユーザーに価値ある機能を素早く届けることを目指したユニットとして「キカク組」が発足しました。これはエンジニアだけでなくディレクター・プランナー・CRE・セールスなども所属する職種混合ユニットです。仮説検証型アジャイル開発という手法を取り、価値探索とアジャイル開発のサイクルを回し続けています。

価値探索のサイクルでは、要望やすでにリリースした施策の検証結果などをもとにまず仮説を立てます。その仮説の論理的整合性や実現手段の妥当性などを検証・評価して、MVP(Minimal Viable Product)というニーズを満たす最小のプロダクトを特定します。

1つ仮説検証をするにも時間がかかりますから、どのネタから手をつけ始めるかという優先順位としてRICEという指標を導入しました。

www.intercom.com

開発のサイクルでは小さく回しMVPを素早くリリースしてユーザーの反応を伺い、その後の検証に利用します。また、ユーザーの利用状況を検証の材料とすることがよくあるので、利用状況が観測可能な状態にすることも開発の完了条件の1つに盛り込んでいます。

キカク組のエンジニアは何をするのか

キカク組のエンジニアは仮説検証とアジャイル開発両方のサイクルに深く関与しています。

仮説検証のサイクルでは、エンジニア自身もMackerelの利用者であるという目線を活かし、1ユーザーとして企画を持ち込んだり、立案されたソリューションが本当に課題を解決するのか、あるいはMVPとして過大ではないかなどを検査したりしています。

アジャイル開発のサイクルでは、あらゆる技術領域に触れて実際にアイデアをカタチにしています。また、エンジニアでないと設計できないAPIのインタフェースを考えたり、ドキュメントを書いたりしています。さらに、リリースしたモノの利用状況を観測可能にするための実装やデータ基盤への改修も行っています。最近は手戻りを少なくするためにモブプログラミングもはじめました。

半年の振り返り

私はおよそ半年間キカク組エンジニアとして走り続けてきました。率直に言ってとても大変でした。自分がエンジニアとして開発するのはもちろん、ディスカバリーにおいても既存の枠組みから外れて突拍子もないアイデアを考えるのが得意なので、常に両方のサイクルのために頭をフル回転させている状態でした。議論においても「本当にこれでいいんですか?」と声を上げるのは自分が多かった気がします。

開発において検証に使うデータを収集する実装の整備を行ったり、開発を効率化させるためにCIを整えたりしたのは今後にも繋がる良い投資ができたと思っています。ディスカバリーの方でも継続してサイクルを回せるようにしていきたく、例えば特定の個人に依存しないようスキルやナレッジを継承していきたいものです。

来年以降も私はキカク組エンジニアでい続けることになると思います。ユーザーのみなさまにはMackerelのイベント・SNS・CREとのコミュニケーションなどでぜひフィードバックをお寄せくださいますようお願いいたします。私個人に伝えてくださっても構いません。仮説検証においてユーザーの声をとても参考にしています。来年はユーザーの皆さまとのミーティングにも我々キカク組開発エンジニアが同席してお話しできたらと考えています。

25日目のエントリとして、キカク組がMVPとして作りリリースしたとある機能に関する記事を書こうと思います。こちらもお楽しみに。